きりのちはれ

やみときどきひかり

おもうがままに。

ここ最近読んだ本の雑な読書感想文

最近結構本を読んだので自分メモがてら。

多分ノーネタバレです。

読んでinputするだけ、というのは勿体無いしね。

inputを書けばoutputにもなる。それが大人の特権だ。

ちなみに紹介画像はamazonさんから借りてるので、

そこからポチってくれると私が10円くらい儲かって喜ぶよ!(PR)

TL;DR

一番下でおすすめしてる『蜜蜂と遠雷』ぜひ読んでほしい。

感想

それではいってみましょー

※タイトル横の()内は私評価、100点満点

殺人出産 (75点)

村田沙耶香さんの問題作…問題作だろうか?

本の構成は短編が4つか5つ入ったもので、メインは表題でもある『殺人出産』だ。

主観的に言えば残虐であったり、異常な表現が多く好みの作品とは言えなかった。

しかしこの本の主題はまさに「異常性を疑え」ということだろう。

いずれも現代の普遍的な価値観からすると異常な内容だが、

作中世界はその異常さが定着しかけているか、あるいは定着する過渡期を描いている。

一貫して、異常だと感じる私(あなた)が異常なのでは? というテーマの短編集。

率直に、常識に一石を投じ、現実を疑わせる著者の価値観は一読の価値あり。

ちなみに『清潔な結婚』のラストシーンは伝えたい事がなんなのかはよくわからなかった。

自分なりに解釈してみたものの、他の話に比べると自分でも消化しきれていない…求む解説。

チア男子 (50点)

友人の紹介で最近ご贔屓な朝井リョウさんの青春スポーツもの。近々アニメ化でしたっけ?

正直に言ってあまり面白くない…。

男子チアという題材は面白いし、チアの解説やその面白さを伝えようという意思は感じる。

朝井さんって別に文章がすごくうまいわけではないんですよね。

題材や調査力、多角的な見せ方やトリック、若者の感性を言語化する表現力はすごく好きなんですが…

「主人公を据えたド直球な青春スポーツ」に関しては、それらの能力が発揮されるわけではなくううん。

登場人物の心理描写や場面転換、盛り上げ方など、王道的な作品だとどうしても引っかかってしまう。

朝井さんはこういう王道な作品も書くんだ、という点に関してはすごく尊敬できる。

題材やストーリーがつまらないわけではないのでメディアミックスの方がもう少し期待できるかも。

原作は朝井さんファンなら読んでみてね、と言ったところだろうか。

世にも奇妙な君物語 (65点)

続けて朝井リョウさんからもう1作品。

チア男子を借してくれた友人から一緒に渡された。

こちらのほうが朝井さんらしい作品。

タイトルでお察しだが、世にも奇妙な物語のファンだという朝井さんによるアンソロジーな短編集。

世にも奇妙な物語らしいといえばらしいが、若干合理性を求めすぎている感じがしないでもない。

世にも奇妙な感は薄いし、ミーハーな見解かも知れないが、個人的には最後の短編が一番好き。

斜に構えつつもベタベタの真っ向勝負で突っ込んで行く感じ、悪くない。

夜のピクニック (75点)

恩田陸さんの代表作。だよね?

著者の母校の名物行事、団体歩行を通して描かれる物語。

起承転結があり、そこそこに抑揚があり、仕掛けがある。

トーリーの面白さや構成に関しては、ぼちぼち良作といった感じ。

物語そのものよりも、恩田さんの文章の丁寧さ、嫌味のなさが好きだったなーという印象が強い。

登場人物の心理描写が上手く、複数の登場人物の視点をきれいに描ききっていると思った。

読みやすさはピカイチ。

率先して今手に取る本でもないが、人におすすめすることには何ら抵抗のない一冊。

嫌われる勇気 (80点)

近年割りと話題になっていたような気がする啓発本。

啓発本は好きじゃないんですが…うん、まぁ物語構成で読みやすいし、内容自体は共感できるものだった。

哲学者の先生と悩める若者の掛け合いで物語が進むので、

思想が必要以上に押し付けがましくならない点が他の啓発本より好印象。

当然、著者としては伝えたい方向性があり、物語も恣意的にそちらに引っ張られる形なので、

斜に構えて読むとそこが鼻についてしまうだろうな、とは思うが。

読んでみて損はないと思う。

幸せになる勇気 (70点)

嫌われる勇気の続編、完結編。

基本的な内容・構成は一緒だが、前作よりやや具体的・直接的なテーマを扱っている…のかな。

確かに2冊合わせて読むとより理解が深まる部分はあるが、

ややくどく、また堂々巡り的な印象を受ける部分がないでもない。

嫌われる勇気を読んで共感したなら読んでみても良いと思うが、

そうでなかった人が読んでも特に得るものはないと思う。

個人的に好きな言葉はこっちのほうが多かった。

蜜蜂と遠雷 (95点)

恩田陸さんの最高傑作、だそうです。

「天才ピアニストが~」っていう紹介文だけみて、

「『4月は君の嘘』と似たような感じかなぁ」と敬遠していましたごめんなさい。

最高でした。はい。

2段組500ページという中々のボリュームながら、全く飽きることなく読み切ってしまった…。

4人のピアニストを主人公に据え、

それを取り巻く数人の視点も加えて描かれるピアニストたちの物語。

複数人物の多角的な視点で見せる心理描写というのは、

夜ピクでもそうであったように恩田さんの魅力だと思う。

だが、はっきり言ってその技量が夜ピクの比ではなかった。

音楽をテーマにした作品というと、

「天才がいて、いかにすごいかを聴衆が頑張って表現する」というものだと思っていた *1

この作品が何よりすごいと感じたのは、

「1人の主人公の演奏」に対して、他の主人公がその演奏を聴く物語が描かれることだ。

演奏している主人公はその場面において間違いなく中心にいるのだが、

「別の主人公が聴いていること」を持って物語は前へ進み、深淵へと導かれていくのだ。

「音楽の凄さ」が展開されるのではなく、

「音楽をすごいと感じる思考」が展開される…とでもいうのだろうか。

そしてその思考を持って、演奏者の凄さが間接的に、だが深み・実感を持って伝えられるのだ。

演奏する主人公の凄さと聞き手の主人公の厚みが連動して物語は進む。

登場人物たちは成長し、やがて冒頭で投げかけられた謎とも言える一文の意味が解き明かされる。

登場人物全員がとても立体的で、一人の捨てキャラも、無駄な場面もない。

すべてのシーンが見せ場で、そして美しく完結する。

とにかくこの感動を多くの人に味わってほしい。最高でした。

(まぁ色々受賞している話題作だから読んだ人も多いだろうが)。

*1:私の浅学さゆえでもあるが