きりのちはれ

やみときどきひかり

おもうがままに。

年末年始に観たり読んだりした作品ランキング

久しぶりに映画や小説をわーっと鑑賞したので、

備忘も兼ねて良かったもの順に並べる。

知人の影響で朝井リョウ多め。

まずは結果をざっと。

  1. ままならないから私とあなた(小説)
  2. ポッピンQ(映画)
  3. 何者(小説)
  4. 桐島、部活やめるってよ(映画)
  5. 首折り男のための協奏曲(小説)
  6. この世界の片隅に(映画)
  7. 星やどりの声(小説)
  8. 秒速5センチメートル(映画)
  9. 僕は明日、昨日のきみとデートする(映画)

印象に残ったこととかポイントとか

ままならないから私とあなた(小説)

朝井リョウの小説。

『ままならないから私とあなた』と

短編『レンタル世界』の二本が収録されているが、

ここでは後者のみフォーカス。

音楽の道を志す主人公・雪子と

幼馴染で天才の女の子・薫の2人を軸にした物語。

物語終盤における2人の会話が非常に印象的。

善悪が明確な物語で一方に感情移入するのはままある。

しかし件の会話では一言ごとに双方に感情移入し、

二律背反的な感覚を鮮明に描き出されるようであった。

その会話を読むとき、

自身がどちらにいるのか・いたいのかを

突きつけられる人は多いのではなかろうか。

この物語はその是非を断ずるものではなく、

あくまで問いかけるものだ。

読者に判断を委ねるその姿勢が朝井リョウらしいな、と思った。

押し付けがましくないが故に、

(安っぽい表現ではあるが)自身の価値観に響くものがあった。

ちなみにこの会話の中で本編中の本当に何気ない、

ごくごく自然なとある台詞(?)が伏線として回収されるのだが、

なんかもうぐうの音も出ない。

首に冷たい刃を添えられるような感覚。すごい。

ポッピンQ(映画)

www.popin-q.com

こちらは東映60周年記念プロジェクトのアニメ映画。

キノの旅サモンナイトで同じみ

黒星紅白がキャラクター原案を担当。

異世界に迷い込んだ女の子たちが

ダンスで世界を救うファンタジー作品。

昨今の作品が高い評価を得るには、

伏線や抜け目ない構成による思慮深さ・興味深さ…

interestingな面白さが過剰に求められると感じる*1

すごく穿ったことを言うと、玄人ぶれる作品がウケる、みたいな。

本作はそんな風潮を正面から吹っ飛ばしてくれる*2

伝えたいことを真正面から恥ずかしげもなく示してくる。

端的に言えば「子供っぽい」のかもしれないが、

それを大人が楽しめるだけの映像・音楽・演技で魅せてくれる。

賢ぶる必要なんて全くなくて、

ポップでキラキラで可愛い映像を楽しみ、

ダンスが、仲間が出来上がっていく成長を楽しみ、

ちょっとだけ泣ける物語とメッセージを楽しむ。

とにかく素直に楽しめばいい。

アニメかくあるべし、なんて感じた作品。

何者(小説)

こちらも朝井リョウの小説。

2016年秋に映画化もしているがそちらは未視聴。

就職活動中の男女6人の物語。

ミステリー作品ではないのだが、

登場人物から投げかけられる問いかけや、

物語に秘められた背景を想像しながら読む感覚は、

まさしくミステリーのそれである。

最後の場面が見せ場であるのは間違いない。

が、物語の端々に綴られる主人公・にのみやたくとの思考…

というか、その思考を理解しやすい文章に落とし込む

朝井リョウの「言葉にしづらい感情を言語化する力」

には素直に感嘆してしまう。

桐島、部活やめるってよ(映画)

こちらも朝井リョウ原作の作品。

自身の映画を理解する力が足りないのもあるが、

おそらく原作小説で読んだほうがより楽しめたかな、と思った。

この世界の片隅に(映画)

第二次世界大戦中の広島を描いたアニメ映画。

クラウドファンディングによって予算を集め、

わずかな上映館からじわじわと人気が拡大している話題作。

わりと引っかかるところ無くツルっと観てしまったが、

気付けば2回ぐらい涙ぐんでいた…。

そんなに感情移入していないつもりだったけど

なにか響くものはあったんだろうか…。

語彙力が足らないのでこんなところ。

首折り男のための協奏曲(小説)

伊坂幸太郎による、殺人鬼・首折り男で結び付けられた連作集。

個々のストーリーは伊坂幸太郎らしくて楽しめた。

だがなんというか…全体として一つの作品まとめたことについては、

正直うーんという感じだった。

過去作品とのリンクも沢山散りばめられているらしいが、

自分が伊坂幸太郎を網羅的に読んでいない事もあってなんとも言い難い。

そして各ストーリーのリンクはすごく恣意的で、どうにでもなる感じ…。

個人的には、その結びつき自体を素直にフィーチャーした

フィッシュストーリーのほうがとても好き。

むっちゃ適当な思いつきを述べるなら、

ゴールデンスランバーに対するモダンタイムス、

みたいな対比を意識して2作を読むと面白いのではないだろうか。

適当です。

星やどりの声(小説)

またまた朝井リョウの小説作品。

喫茶・星やどりを取り巻く家族と人間関係の物語。

朝井さんらしい仕掛けはありつつも、

こういう優しいストーリーも書けるのね、という感想。

つまらなくはないが、もっとグサリとえぐりに来る物語のほうが好き。

秒速5センチメートル(映画)

君の名は。でおなじみ新海誠監督の定番作品。

10年くらい前の作品だが安定の映像美である。

しかしストーリーやキャラクターにこれと言った深さなどはなく、

正直、引っかかるところがなかった…

まぁ時間も短いからしょうがない部分はあるが。

監督はこういう作品が作りたんだろうなぁ(小並)。

僕は明日、昨日のきみとデートする(映画)

福士蒼汰と小松菜々が演じるラブストーリー。

物語の根幹にある秘密が存在している*3

斜に構え過ぎかもしれないけど、

「こういう設定あったら泣けるんじゃね?」

というジャストアイデアに無理やりその他の要素を

とってつけたような印象が強すぎて…。

こういう作品では背景の完成度・抜け目なさが重要だと感じるのだが、

この作品では根幹の秘密以外が適当すぎて、

正直「泣かせるために作りました!」感を受けて冷めてしまった…。

映画の2時間という枠に縛られない、

原作小説ではもう少し作り込みがあるんだろうか?

*1:朝井リョウの作品を先に挙げておいて何を、という感じではあるが

*2:ある一つの要素については伏線となっているが、これは物語の本質に関わるものではなく、かつ観た人全員がすぐに理解できるものだ

*3:タイトルで分かる気がするが